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Chaotic Neutral

左にも右にもよらず、自由な生き方探し。

語学 ― 伝達速度と非定型的表現 ― II


(参照: 語学 ― 認知速度と非定型的意味の伝達 ― I

軽い要素を前に、重い要素を後に置くことそのものは、認知速度を増やしも減らしもしないが、認知速度が大きいことの結果として、軽い要素を前に、重い要素を後に置きたくなる。

重要性は同じでも、1時間かかると思われる仕事と9時間かかる思われる仕事があるとする。

持ち時間が10時間あるいはそれ以下であれば、人間は1時間の仕事の方を先にやりたがる。なぜならば、1時間の仕事を先にやれば、少なくとも1つの仕事を終わらせることができることはほぼ確実だからだ。

一方、持ち時間が10時間ではなく10日間であれば、1時間の仕事を優先させたいという気持ちが弱まる。

これは私の推測だが、会話における意味伝達について、せっかちな社会とそうでない社会がもともとあって、それが語順を決める大きな要素になっているようだ。大きな文明圏の中央ではせっかちな社会ができ、辺縁ではそれほどせっかちではない社会ができる。

フランスはヨーロッパのど真ん中にあり、西には大西洋と新大陸、南には地中海を隔ててアフリカがあり、東には非イタリック語族の話者が住むドイツがある。多様な文化が交差し、非定型的な意味伝達を強いられる局面が多くなる社会環境があったため、他のイタリック系と比較しても、フランス語では省略表現が少なく、それゆえせっかちにならざるをえなかった。語順が高速言語らしいSVOとSOV混在型であるだけではなく、代名詞が擦りきれたように短くなっている。

現代の英語は結構高速だが、ヨーロッパ大陸との交流がそれほど盛んではなかった時代の古英語は、かなり低速な言語だった。古英語の叙事詩『ベオウルフ』から文を1つ抜き出してみよう。

Hwæt, we Gar-Dena in geardagum theod-cyninga thrym gefrunon. (おお、我ら昔の年月日々の槍のデーン人は、国民の王たちの誉れを聞いた)

「Hwæt」は現代英語の「What」に相当するが、ここでは注意を喚起するための語として使われているので、「おお」と訳しておいた。「we Gar-Dena in geardagum」は文の主語で、「我ら昔の年月日々の槍のデーン人は」を意味する。「theod-cyninga thrym」は「国民の王たちの誉れを」を意味する目的語で、「gefrunon」が動詞だ。目的語の位置は低速言語である日本語と同じである。

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